■ PRANJ同時多発テロレポート7
NY・ワシントンDCより (2001年11月6日JMM掲載)
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■ PRANJテロ関連レポート NY・ワシントンDCより
■ 岩田健太郎 :ニューヨーク市ベスイスラエルメディカルセンター感染症科臨床フェロー
■ 加瀬みき :AEI アメリカンエンタープライズ政策研究所 客員研究員
■ 村上博美 :ESI 経済戦略研究所 研究員
■ 渡部恒雄 :CSIS 戦略国際問題研究所 日本部主任研究員
■
岩田健太郎:ニューヨーク市ベスイスラエルメディカルセンター感染症科臨床フェロー
炭疽菌最前線の外国人医師
炭疽菌テロ治療の最前線にいる外国人医師は、実は多いことをご存知で
しょうか。特に1950―70年代に米国では医療過疎が大きな問題となり、外
国人医師が多く採用されるに至りました。安い給料の研修医で数年研修す
ることを許可しましたが、彼らに与えられるJというビザは一般の医師と
して米国で彼らが勤務することを許しませんでした。彼らは母国に帰る
か、米国の僻地で医療奉仕をすることでグリーンカード保持権を獲得した
のです。この仕組みは現在も続いていますが、途上国などよりはそれでも
はるかによい待遇のため、外国人医師の多くはこのような研修医の不遇を
囲っていても我慢して勤務しているわけです(バングラディシュの知人は
かの地で医師としての年収が8万円だったそうです)。日本人が米国で研
修医として勤務することはあまり例がありませんが、ゼロというわけでも
ありません。かくいう私もかつては米国の研修医だったのです。
さて、ニューヨーク市で働いている日本人医師は私だけではありませ
ん。ニューヨークには日本人が10万人くらいいるそうですが、研修医とし
て働いているもの、開業医など結構たくさんいるのです。 WTCが崩れたと
きは連絡網を作って在米邦人の健康と安否の確認ために尽力を尽くし、大
いに貢献もしました。その彼らが現在トラブルに巻き込まれています。数
人の内科研修医が所用で日本に一時帰国したのですが、領事館でビザの更
新を拒否されたというのです。その理由は、就労を確認している書類のサ
インが「スタンプ」であったから、だというのです。
ブッシュ大統領は、同時多発テロの実行犯とされる19人のうち、少なく
とも9人は米国に合法的に入国し、その多くが学生ビザを持っていた事実
から、「悪人を見つけ、処罰するのがわれわれの仕事だ」と語り、学生ビ
ザで入国する外国人について、実際に通学しているかどうかなどを厳しく
調べる方針を示しました。さらに、ビザ発給に当たってのチェック項目を
増やし、ビザの条件に違反した者には国外退去を求めるのだそうです。
米国では一般にハンコを使うことは少ないですが、多忙なエグゼクティ
ブなどは自分のサインをかたどったスタンプを作り、それを秘書などに持
たせて効率よく書類を処理しています。契約書などの重要な書類でもこれ
を用います。今まで領事館ではこのような「スタンプ」サインについてな
んら問題にしていませんでした。それが突然、事前の通知もなくビザ更新
拒否の理由となったのです。
彼らは仕方なく米国の期間に問い合わせの手紙を出し、「自筆の」サイ
ンの入った書類の再郵送を依頼し、勤務先やら何やらにも慌てて対処を求
めました。休暇期間が終わった彼らはいまだに病院での勤務に復帰でき
ず、日本で足止めを食っています。
たった数人の研修医のこと、と軽く見てはいけません。ニューヨーク市
にはたくさんの外国人研修医が病院で働いています。彼らはナイキの中国
工場みたいなもので、高い米国医療を若干安価にし、安くてよく働く労働
力として重宝されると同時に,アメリカの医療現場で職を得ようとする外
国人の要求を満たすという持ちつ持たれつという関係が成り立っていま
す。病院によっては半分以上の研修医を外国人が占めるところもあるほど
です。彼らの労働力は、ニューヨーク市の医療に必要不可欠なのです。現
在市内ではすでに数名の皮膚炭疽症が、そして(この原稿執筆時点では)
一人の吸入炭疽症患者が見つかり、彼女は死亡にいたっています。「私は
炭疽症かどうか確認してほしい」といった問い合わせや外来患者が殺到し
ています。猫の手も借りたい程大忙しのこの時期に、国外に出た外国人研
修医が足止めをくい、現場復帰を遅らせるなどとは、なんたる矛盾なので
しょう。
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■ 加瀬みき: AEIアメリカンエンタープライズ政策研究所客員研究員
続・フランスの焦り
フランスの「焦り」に対するご意見をいただきましたが、焦りの本質と
いう根本的な点で誤解を抱かれているように思います。
第5共和政の特徴、大統領と首相の権限の分離、それゆえにコハビタシ
オンが生む政治の難しさ、特に選挙を前にしての大統領と首相の駆け引
き、さらにはアラブ系国民を抱える国内政治の難しさ、おっしゃるとおり
だと思います。またフランス国民が一律な意見をもっているわけではない
というのも当然です。アメリカでもイギリスでもアフガニスタン攻撃に反
対する人はもちろんいます。
フランス人の大多数がフランス軍が前線で戦うことを希望しているとも
思いません。が、このテロに対する総合的なキャンペーンにフランスがも
っと積極的に参加し、その存在感がしめされることを願うフランス人は非
常に多いと思います。これはテロの直後3週間にわたってパリに行き、フ
ランス人の官僚などと話した感想でもあります。
「積極的に参加する」というのは、何もなんでもすぐに兵を送るという
ことではありません。今回の対テロキャンペーンは、軍事、外交、諜報、
経済、広報とあらゆる分野での戦いです。政府レベルで反テロという姿勢
を明らかにした国々(先進国だけではなく世界のほとんどの国が表明して
います)にとって、どの方面でどのような貢献ができるか、あるいは貢献
することを選択するかは国によりさまざまです。当然貢献度が大きく貴重
な程「作戦」により大きな影響が与えられます。私がフランスの「焦り」
と書いたのは、十分な貢献ができない故に望むほどの影響力がもてない、
グローバルな意思決定に加われないことへの焦りです。一企業においても
貢献ができない社員は社の方針決定には加われません。たとえ役員でも役
員会での発言は尊重されないのは当然です。
フランスは英国同様グローバルな視野を持ち、バランスオブパワー、各
国の利害などを冷静に見極めようとする国です。第2次大戦後、アメリカ
が西側のリーダーになった後も常にいかに西側の意思決定に影響を与えら
れるかを考え、影響を与えようとしてきた国です。その歴史と実績がある
にもかかわらず、今回は明らかにイギリスばかりでなくドイツにまで水を
あけられています。フランスの焦りはこの総合的なテロキャンペーンの意
思決定の「イナーループ」つまりコア―メンバーになれないことです。コ
ア―メンバーでなければ、今回のようにどの国も何らかの余波を受ける可
能性がある軍事、外交、経済面での意思決定に本当には加われないという
ことです。NATO またはEUという組織が組織として参加する部分にはその
中の主要メンバーとして加われますが、今回のように完全にアドホックそ
れも貢献できる国が加わるという構成では自動的には意思決定のループに
加われません。
フランスがリーダーシップに加わることを望んでいるのは、EUサミット
開催中に英、独、仏という3大国のみの会合を提案し(他のメンバーから
大変な非難をうけましたが)アフガニスタン対策を協議したことからも分
かります。貢献する希望が強いこともも特殊部隊派遣の申し出や最近の電
子観測機搭載機の提供の申し出からも分かります。政府内の焦りは議会の
発言、あるいは著名なコラムニストの執筆にも出てきます。ジスカールデ
スタン元大統領のフランスには海に浮かべる空母もない(空母チャールス
ドゴールは船渠入りしたまま)という嘆きの発言からも分かります。
アフガニスタンとからんで国際的な努力がなされているのがパレスチナ
問題です。ここでも今回ブレアー首相がアメリカとともにパレスチナ国家
設立発言をし、この問題でもリーダーシップをとっています。事件の前、
ブッシュ政権が中東問題に積極的な姿勢を示さない中、ドイツがイスラエ
ルとパレスチナの仲介に乗り出しました。これはドイツの歴史を考えれば
画期的なできごとです。この裏には、フランスには中東問題に関する他国
からの信頼が無いという事情もありました。アメリカの親イスラエル政策
と対比するフランスの親アラブ政策という単純なものではないことは明白
です。
繰り返しになりますが、テロ撲滅を望む国々が皆前線に兵を送る必要も
ありませんし、それは戦略的にも全くマイナスです。日本の自衛隊につい
ても前線に立つ必要はありません。が、経済、外交(今回で言えばアフガ
ニスタンの周辺国あるいは中東諸国の協力をいかに得るか)、諜報、ある
いは化学兵器(例えば湾岸戦争時ドイツのこの分野の知識は貴重な貢献と
みなされています)に対する対応など直接の軍事行動以外にも貢献はでき
ます。どの分野でどの程度の貢献ができるかはその国のこれまでの積み上
げ、時々の国家利益や政策の結果です。たとえ正しい政策であってもその
影響はあるものです。貢献度が大きいほど発言力は大きくなり、つまりは
自国の利害に影響する出来事に係われる度合いが大きくなるということで
す。こう言った意味でフランスの現状は日本にも考えさせられる点が多い
のではないでしょうか。
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■ 村上博美:ESI経済戦略研究所研究員
テロによる世界経済への打撃
9月11日以降、特に落ち込みが激しい航空産業、観光産業など直接的な
影響を受ける産業分野のみならず、世界各地で産業分野を問わず経済失速
が広がっている。世界経済を牽引している先進国の工業生産は落ち、株価
は下落し失業率は軒並み上がり、日米で現在失業率は5.4%に急上昇し、年
末までに米失業率が6%代になるだろうというエコノミストもいる。2週間
ほど前に緊急経済刺激パッケージ法案が議会を通過し、その主な内容は企
業に対する減税及び減価償却の期間短縮だが、職を失っている低所得者に
対するものより高額所得者への減税による恩恵が多いという批判があっ
た。元々現政権を握っている共和党は金持ち層を優遇する政策、民主党は
低所得者層を優遇する姿勢の違いがあるが、今回も危機にありながら政党
の伝統的支持層を意識した政策として例外ではないといえるだろう。
米労働省のレポートによると先月だけで41万5000もの職が失われ、危機
感を抱いた民主党の議員らの提唱による$700億 (約8.4兆円)の失業者
救済パッケージについて現在議会の委員会で議論が続いている。
アメリカの経済失速以外にテロによる世界経済への影響で一番大きいの
はグローバリゼーションに対する打撃であろう。人・物・金・情報の流れ
が滞らないように障壁やコストを低くして、世界経済の成長を効率良く進
めようというグローバリゼーションの流れが一時的に逆流しつつある。つ
まり、更なるテロの危険性やセキュリティチェック強化で人や物やお金の
流れが滞り、それに対する経済的ダメージが大きいということだ。これは
自由貿易に大きく依存してきた経済成長(一人あたりのGDPの上昇に代
表される)が、脅かされているということであり、このような脅威を取り
除かなければ、これまで日本や世界が享受してきたような経済的繁栄は今
後望めなくなる。
例えば、「テロが恐ろしいので海外観光旅行をやめる」ということは、
商用の海外出張を止める以上に深刻な経済的影響がある。つまり、飛行機
会社にお金が落ちず、タクシーには人が乗らず、空港のお土産やさんにも
お客がこず、また世界各地の観光地では閑古鳥が泣き、その地域で観光産
業に従事している人たちが失業する。
あまりにも経済的な打撃が大きいため、アメリカを始めスイス、ベルギ
ー、カナダ、アイルランド、ジャマイカでは政府が航空産業を救済してい
る。話は逸れるが、海外観光旅行が不人気だということはその分(テロに
よるセキュリティコストが上昇したおかげで)国内観光へ客がシフトする
ということであり、一時的に国内観光産業が潤うがそれは本質的な改善で
はない。
つまり、国内観光産業が不振なのは高コストによる構造的なもの(値段
の高い国内旅行へ行くより割安な海外旅行に行く人が多かった)であると
いう問題の根本は変わっていないからだ。このグローバリゼーションの逆
行が一時的であるとすると、国内観光産業及び交通産業は今ここで間髪い
れず構造改革を行わなければ、仮にテロの危険性が極端に下がった場合、
国内観光地の衰退は避けられないだろう。
また、WTO会議で世界各国の代表が集まってこれまで何を喧喧諤諤話
し合ってきたかといえば、物・サービスが流れやすくするために、不必要
な関税・障壁を低くしましょうという共通のゴールの下で皆でルールを決
めましょうということだ。
これは、消費者である私達個人にとって非常に有益な流れである。例え
ば、コストを最小限にするためにトヨタなどの自動車メーカーは世界各地
で分業生産体制を取ってきた。カナダや東南アジアで部品を作り、それら
をアメリカの組立工場へ輸送し組み立てて製品にし消費者に提供してい
る。しかし、カナダで生産している部品がアメリカの工場へ届くのに、テ
ロの影響でセキュリティチェックが強化され通常の数倍時間がかかる。ま
た国境を超えるのに時間のかかるトラックではなく割高の船で輸送すると
そのコスト上昇分が商品の値段に反映され、消費者である私達がその分を
支払うことになる。つまり、WTOのゴールから9月11日以降一時的に遠
ざかっているのである。
それは航空産業でも同じだ。保険会社がテロに対する飛行機保険の掛け
金を上げたので、飛行機会社はただでさえ客足が減って経営が苦しく、航
空運賃を上昇せざるを得ないし採算が合わない路線は統廃合している。例
えば、ワシントンDCから東京への直行便は唯一ANAが飛ばしているの
だが、12月には元通り運行されるということだが、客足激減により11月はシカゴ
経由便として運行している.
これはワシントンDCに住む私達にとっては不便になることこの上ない
(ご存知の方も多いだろうが、日本への飛行時間は直行便では14時間程度
であるが、乗り継ぎ便となると17時間以上かかる上に時差ぼけで次の飛行
機を待つのは大変疲れる)。
グローバリゼーションへの逆行は私達消費者に『不便さ』と『料金のア
ップ』という形で跳ね返ってくる。本来ならば最大限経済成長に『直接』
寄与する経済活動にお金を使いたいのに、『間接』コストの部分に多くを
費やさなくてはならないことが何よりも致命的な打撃なのである。特に発
展途上国にとっても、貿易の障壁やアクセスコストが低くなることは、そ
れほど資本がなくても市場に参入できるということであり、今まで閉鎖的
だった市場(例えば日本の市場)が開放されるとそこへ安い労働力を武器
に利益をあげられる。アメリカや日本を始めとする先進国が先頭に立って
反テロキャンペーンを進めるということは、それらの国が反テロキャンペ
ーンのコストを負担することである。世界経済の成長のため(また発展途
上国との経済格差の解消のため)、私たちはこのグローバリゼーションの
流れを断固として元に戻すということに全力で努力しなくてはならないの
である。
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■ 渡部恒雄:CSIS戦略国際問題研究所日本部主任研究員
日本のテロ対策の準備状況について
先週のPRANJレポートで、
ベスイスラエル・メディカルセンターの臨床
フェローの岩田健太郎氏が、激務の中、その必要性を十分に意識して、徹
夜で翻訳したニューヨーク市の感染症のガイドラインに関しての日本から
の反応が鈍いという内容が報告されていました。岩田氏が問いかけている
ように、もし、地方自治体や各医療機関が、中央政府だのみで対応してい
るとすれば、日本のバイオテロへの対応は、憂えるべき状態にあると思い
ます。それは、日本のテロ対策全般の対応の遅さとも関係する問題のよう
に思います。その意味で、岩田氏の「炭疽菌の問題のように刻々と事情の
変化する問題には、大きな役所では全員からはんこを突いて回っている必
要もなく、小さい組織のほうが効果的な場合もある」ということは、非常
に重要な指摘でしょう。
災害やテロの被害にまず対応しなくてはならない地方自治体の準備と判
断の重要さは、日本でも阪神・淡路大震災の悲劇などが十分に物語ってい
ます。現在までのところ、日本の各都道府県と市町村は、どのような対応
と準備をしているのでしょうか。非常に興味があるとともに懸念されると
ころです。JMMの読者の方に当事者がおられれば、ぜひ
(pranj@pranj.orgまで)状況を教えていただきたいところです。 それ
から中央政府自体の対応もさることながら、中央政府と地方自治体との間
で、危機や被災の際にどのようなコミュニケーションおよび調整機能が想
定されているのかが、懸念されます。
以前にもPRANJレポートで少し触れましたが、 私の勤務するCSISが他の
民間団体と共同で、今年6月にダークウィンターと題したバイオテロのシ
ュミレーションを行い、その結果を踏まえ、関係者が政府と議会に多数の
政策提言を行いました。(http://www.csis.org Dark Winter の項 参
照)10月25日の上院の軍事委員会では、シュミレーションで大統領役を務
めたCSIS理事長のサム・ナン元上院議員が証言をし、その中で強調したこ
とは、 国際的なバイオテロ攻撃に備え、WHO(世界保健機構)との強い関
係を作るとともに、連邦政府、州政府、地方自治体の間の明確で効率的な
コミュニケーションを確立せよ、というものでした。岩田氏が指摘するよ
うに、バイオテロのように前例がなく、かつ刻一刻と状況が変化していく
場合、関係者のコミュニケーションの優劣が、被害を最小限に押さえるた
めには極めて重要という問題意識からでしょう。
直接にバイオテロを扱った本ではありませんが、日本の政府の災害やテ
ロへの準備状況に関して、非常に参考になる本があります。麻生幾氏の
「情報、
官邸に達せず」(新潮文庫)という秀逸なルポです。この本で
は、東海村の臨界事故、オウム真理教教祖逮捕、阪神・淡路大震災、北朝
鮮危機などの日本がこれまでに対処した問題で、いかに情報の管理とコミ
ュニケーションに問題があり、その問題の解決が進んでいないかが描かれ
ています。例えば、阪神・淡路大震災では、情報の伝達の悪さゆえに、い
かに政府や自治体の対応が後手後手にまわったかがわかります。衝撃的な
のは、地震直後に国土庁防災業務課通信室が作成した内部文書で、「国土
庁の防災無線網は、東京の中央官庁間では繋がっているが、地方自治体と
は通信は不可能な状態である」という内容が暴露されていることです。こ
のような致命的な準備不足に関して、政府の誰かが責任をとったのでしょ
うか。
いずれにせよ、最初の問題意識に戻れば、地方自治体が中央政府から指
示と情報を当てにして、自らの準備をしていないとすれば、その結果は恐
ろしいことになりそうです。このレポートを読んでいる皆さんも、とりあ
えず、自分の住んでいる地方自治体に対して、災害やテロへの準備状況を
問い合わせてみてはいかがでしょうか。それから、今後の日本のテロ対策
には貴重な参考例となる現在のアメリカの政府や自治体の対応状況を日本
側の政府や自治体が、どのぐらい真剣に学んでいるのでしょうか。会計年
度末の予算消化の時期には、怒涛のようにワシントンDCに出張してくる
政府関係者には、今の時期こそ、アメリカに来て対応状況を見聞して欲し
いものです。
最後に指摘しておきたいのは、現在のような深刻なテロに直面し、シン
クタンクが独自に政策提言を行ったり、ニューヨーク市のように自治体
が、主体的にテロや災害対策に取り組んできているアメリカのような国で
も、未だに十分な対応ができていないということです。この点で、アメリ
カが他の国よりも特に優れているというつもりはありません。しかし、日
本とアメリカの違いを敢えて指摘すれば、アメリカは自分たちの政府の官
僚制には大きな欠陥があることを前提に、起こりうる危機に対処する努力
が幅広くなされていることです.それに対して日本は,自らの政府の欠陥に
ついて対処するチャンネルが欠けているという深刻な状況を改善できない
ということだと思います。PRANJでは、
たまたま外国人にも政策研究の職
を開いているアメリカで働く日本人が、その情報をささやかでも祖国のた
めに役立てて欲しいと考えて送っているのにすぎません.ぜひ活用してい
ただきたいと思います。
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