PRANJワークショップ記録
| 「中国脅威論批判」 横浜市立大学教授 矢吹晋氏 2002年4月6日 ワシントンDC ■ 講演者 |
|
| 村上:今回は横浜市立大の矢吹先生に「中国脅威論」批判というお話を伺った後座談会形式で進めたいと思います。まず経歴をご紹介させて頂きますと、福島県出身で東大の経済学部を卒業された後、東洋経済新報社の記者としてお勤めになり、その後アジア経済研究所を経て現在は横浜市立大にて教授をされています。中国の現状について鋭く的確な分析をされ、著作に、「巨大国家中国の行方」、「毛沢東と周恩来」、「天安門事件の真相」、「中国の権力システム−−ポスト江沢民のパワーゲーム」「中国から日本が見える」など多数あります。今年NHKの衛星第一放送の正月版特別番組「激動の世界経済、中国−中産階級が国を変える」という番組のキャスターも務められました。今回はNYに講演にいらっしゃった合間にここワシントンでもお話頂ける事になりました。それではどうぞよろしくお願いします。 | ![]() 矢吹 晋氏 |
|
矢吹:時間が限られていますので、今日のトピックは二つに絞ります。他の問題はディスカッションのなかで話題にしたいと思います。最初に、今日本の中国観が非常に混乱しているという話をやり、後半では、今秋に党大会がありますのでその人事分析の話をしたいと思います。
江沢民体制はトップの意見の分立を防ぐため |
|
| 根拠がない人民元切り下げ論 これらの三つの争点について、私とは逆の意見が圧倒的に多かった。私のような見方は少数派でした。この三点セットがいずれも事実によって明らかになり、破産した後に、日本内外で登場したのが「人民元切り下げ」憶測です。アジア経済危機の発生はは97年夏です。「三つの争点」が古くなった段階で「人民元切り下げ必至」という憶測が猛威を振るいました。 これを煽動した代表的「狼少年」は、あえて言いますと『朝日新聞』の船橋洋一記者でした。1997年12月14日朝刊に韓国ウォン切り下げに続く、「第3ラウンドのアジア危機は中国から始まる」という記事を書いた。「中国発のアジア危機の第三波が来る」というものです。それ以後、1998から2000年あたりまでの約三年間、「人民元切り下げ必至」という憶測が猛威を振るい、エコノミストを含めてほとんどすべての論者がその亡霊にとりつかれたような発言をしました。私は船橋記者の記事が出た当時からこれは馬鹿げていると批判しました。そういう事には絶対にならないという事を根拠を挙げて、一貫して言いつづけたのですがその証拠を一つご紹介したいと思います(矢吹稿「朱鎔基、大胆不敵なバブル退治」(http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc3/buns9806.htm)『文藝春秋』1998年6月号)。 |
|
![]()
お手許の資料に人民元の対米ドルの交換レートがありますが、1981年、1980年代の初 |
|
![]() |
|
| 中国の統計:外貨準備高や貿易は信用できる さて中国の統計が信じられるかどうかという議論がありますが、簡単に言いますと 「信用できる数字」と「信用できない数字」と両方あります。信用できる数字は何か と言いますと、たとえば外貨準備高や貿易額です。貿易というのは必ず相手がありま すね。相手がある数字というのは、チェックできます。直接投資(FDI)もそうですね。 外貨準備高に至っては、IMFや世界銀行の指示を受けて、非常に細かいところまで 報告させているわけで、しかも経常的にやっていますから、ごまかしがあれば必ず分 かるはずです。そういう意味で、中国の統計のうちで対外関係を持つものは基本的に 信用していい。これは中国に限らずどこの国でもそうです。ここではごまかしはでき ない。 ただ国内の問題には粉飾がかなりあります。例えば二つのタイプがありうる。国営企 業の場合に、「水増し報告」を行うことによって生産を多く上げたと称して自分の ボーナスを増やそうとするケース。これは業績を誇張する虚報問題です。その逆の事 があります。今は市場経済に移行していますから、民間企業や外資企業が沢山ありま す。このような企業は儲かった場合に、利潤をなるべく少なくみせようとします。と いうのは過少申告する事によって税金を少なくしたいからです。こうして、一方では 過大報告をしようとする場合があり、他方では過少申告をしようとする場合がある。 これはどこの国でもそうなのですけれども、統計の専門家はそのような点は十分承知 の上で、時々サンプリング調査や抜き打ち調査などをやりながらチェックする努力を 続けている。にも関わらず「統計の精度」あるいは統計のバイアスでいうと問題は沢 山あると思います。それは一つは経済のシステムそのものが計画経済から市場経済へ 大きく転換しつつありますから統計制度も再編成の過程にある。統計は色々な系列の 指標をダブルチェック、クロスチェックする事によって、精度を高めることができ る。そのような事情があります。中国当局が意図的に誇大報告をやっているという事 実はないと思われます。かつて「虚報」をやったために、自分で自分を欺き、実情が 分からなくなり、大きな損をした経験を彼らは忘れてはいない。文化大革命期には、 鎖国体制のもとで自閉症的なでたらめをやっていたために、外の世界に接して愕然と したのは、つい昨日のことです。そこから出発してなるべくきちんとしようという努 力をしている。それにも関わらずまだまだ統計の精度に問題があるのは確かです。 「確かな統計」と「不確かな統計」と両方あるので、それらを良く見極めた上で分析 すべきであるのに、何かというと「中国の統計は全部信頼できない」という議論にな るのは、全くおかしい。例えばGNPの成長率について言いますと、中国は今は高度成 長期ですから7% ぐらいというのは当たり前なのです。体質としてそうなのです。中 国に限らず日本も、アジア・ニースもASEANのスリー・タイガースもそうでした。中 国は今これらを追いかけている訳です。このような全体の流れで見ますと、中国の今 の高度成長は自然な流れであって30年前の日本と基本的には同じ事であるという事です。 ですから私の中国をみる基本的なスタンスは、「日本の高度成長期と比較せよ」、と いう事に尽きます。具体的には、2008年北京オリンピックは日本の1964年に比べて44 年遅れてます。2010年の上海万博は大阪の1970年に比べて40年遅れてます。1996年12 月のIMF8条国への移行は日本の1964年と比べて32年遅れてます。それから、日本の資 本取引の自由化を含めた円の自由化は8条国移行の9年後、すなわち1973年です。さ て、そこで中国はどうか。「1996年プラス9年」というのは2005年になるわけです。 ですから2005年ぐらいに資本取引の自由化を含めた人民元の自由化をやるのが一番望 ましいのだろうという見通しを私はもっています。それは日本の例を中国に当てはめ る話です。しかもそれは中国の現実と合うという見通しです。 更に言うと、2008年にオリンピックを開催しますが、オリンピックを開催すると 中国政府の定年制度 |
|
| つづきはこちら 文責 小池氏就 氏(ありがとうございました) |
|
| Copyright(C)1999-2002 Policy Research & Analysis Network 許可無く転載することを禁じます。 | |