2002/01/10−10:34 (時事通信社)
【ワシントン・リポート】ワシントン支局 村田純一
エルサレム問題の一時棚上げを=
小池百合子議員、パレスチナ、イスラエルについて語る


 保守党の小池百合子衆院議員は、カイロ大卒で日本アラブ協会顧問、わが国の数少ないアラブ通の国会議員として知られる。同議員は昨年12月下旬、イスラエル、エジプトなどを訪問、旧知の間柄であるアラファト・パレスチナ自治政府議長にも会ってきた。中東訪問を終えた小池氏は1月2日にワシントンを訪問、米有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で開かれた政策研究会「PRANJ」の会合で、中東問題について講演と質疑応答を行った。会合に参加する機会を得たので、ここに小池氏の発言要旨を紹介する(一部敬称略)。

 ▼シャロンとアラファト、怨念の対決に

【講演】 
 「アフガニスタンにおける今回の対テロ戦争で、米国は中央アジアにくさびを打ち込んだ。カザフスタン、ウズベキスタンなどは米軍に基地を提供する代わりに、米国から国家予算の2、3倍程度の資金援助を受けたのではないか。中央アジア諸国はかつてはモスクワ、続いて上海協力機構を通じて北京に顔を向けてきた。そして今は、ワシントンに顔を向けて動いている。これがアフガン戦争における最も大きな地政学的な変化だ」

 「もう一つ、リビアが今回沈着冷静でびっくりしている。カダフィの子供は米国の空爆で死んだし、経済封鎖も相当こたえたのだろう。リビアのサッカー協会の会長はカダフィの息子で、息子のことも考えているのかもしれない。反米、反イスラエルのリビアがおとなしいので驚いている」

 「イスラエルは(ピリピリして)冗談が通じない国だ。アラファトはこれまで、いつもあちこち(海外)を訪れては、じっとしていなかった。イスラエルは『腰をすえてやれ。あなたの問題なんだ』。ガザのヘリポート爆撃はそのメッセージの表れだろう。(パレスチナに対する)イスラエルの報復はやりすぎだと思う。イスラエルは『米国がアフガンにやっていることと同じだ。何が悪い』と開き直っているようだ」

 「ネタニヤフ元首相も政界に戻る。シャロンは対パレスチナの強硬派。(元首相に会ってきたが)、『テロに勝つための3つの方法は『ウィン、ウィン、ウィン』と言ってた。勝つこと。とにかく攻撃することだと。シャロン・イスラエル首相は対パレスチナの強硬派。シャロンとアラファトの闘争の歴史が個人的な怨念にまで昇華している。とにかくイスラエルは強気だ」

 「12月、4カ所の検問を通って、アラファト議長に会って、とにかく『頑張れ』と励ましてきた。アラファト議長は寂しそうな、これまでにない疲れた表情をしていた。目が白内障気味で、ソファに座ると、ソファのはしをしっかり握っている。手の振るえを止めるためにぎゅっとつかんでいる。飛行機を攻撃されて九死に一生を得た後でそうなったという説もあれば、パーキンソン病だからという説もある」

 「ガザは失業率約70%で、男たちも(街に)たたずんでいるだけ。日本はパレスチナの雇用政策を考えることができるのではないか。国づくりのノウハウを教えることができる。戦後、経済安定本部をつくったように」

 「パレスチナ問題はエルサレム問題。日本としてはやりにくい。エルサレム問題を解決しない限り、根本的な解決にはならない。アラファトがエルサレムをあきらめると、後ろから鉄砲で撃たれることになる。現実は、米国がイスラエルをどこまで動かせるかだ。イスラエルの狙いは、アラファトに対し(イスラム原理主義組織)ハマスへの強硬な態度を取らせることであり、もう一つは、アラファト以外にリーダーを代えてしまうことだ。パレスチナにアラファトの後継者は育っていない。有能な人材は暗殺され、アラファトも後継者を育ててこなかった。いまはまだ一触即発。一つ何かあると、次にさらに激しい報復があるといわれる。しばらくお互い(闘争を)やらせておいて、お互いからタオルが出たときに対応するという考え方もある」

 「ハマスはパレスチナにとって慈善団体だ。パレスチナ人への福祉や食料の供給も行っている。ハマスは特別の財源を持っている。住民への対応が非常にきめ細かい。パレスチナ自治政府は、これまでの経験からゲリラ活動はうまいが、行政は下手。イスラエル建国時にユダヤ人は多くの人が初めての祖国に戻った。一方、パレスチナ人でアラブは動いている。アラブ諸国の多くの行政機関のナンバーツーはパレスチナ人が多い。ナンバーツーたちがパレスチナに戻れるようになればいい。いまパレスチナにとってはすごいチャンスだ。シャロンも治安が守られるならパレスチナの独立国家もあり得ると言っている。エルサレムを国連統治下に置くとか、3分の1ずつの統治にするとか、次の大きな一手が必要だ」

 「エジプトは民衆レベルでは反米、反イスラエルだ。為政者レベルは親米で、対テロ戦争も異議は申し立てていない」

 「日本でテロ対策特別措置法が通ったのは、小泉首相だから。保守党には湾岸戦争時の首相だった海部さんがいるが、『10年前とは天と地の差がある』と言ってた。あやふやなファクターではあるが、『小泉さんだから』審議がスムーズに進んだと言える」
 「集団的自衛権の解釈は変更すべきだし、将来は憲法改正が必要。プレッシャーグループとして、超党派若手の勉強会を結成した。大御所が入ると色がつく。101人いるので、101匹ワンちゃんと呼んでいる。安全保障問題で日本は(自衛権行使について)『CANかCAN NOT』(できる、できない)の選択ではなく、『DOかDO NOT』(するか、しないか)の選択に変えなければならない」

【質疑応答から】
 −米国の対イラク戦争にアラブはどう反応するか。
 「湾岸戦争では、明らかにクウェートに侵攻した敵としてイラクを攻撃した。敵がはっきりしていた。米国のイラク攻撃は、湾岸の時のようにうまくはいかない。アラブ説得は骨が折れるだろう。米国のイラク攻撃がサウジアラビアに与える影響がこわい。アラブの湾岸諸国で、民主的な形でできた政権はほとんどないというのが現状だ。選挙もほとんどが信任投票だ。サウジに波及すれば、日本にとっても大きな問題になる。米国は慎重にやらなければならない。バグダッドにフセイン大統領がいなければ、米国がサウジにいる理由はなくなるという声もある。良かれ悪しかれ、サウジの王制が中東の安定につながっている。

 −日本の中東政策について。
 「(今まで)中東政策はなかった。油政策はあった。アラブはアブラだった。最近、イスラエルにも力を入れるようになってきたが。パレスチナ問題は、エルサレムの問題を一時棚上げすること。日本の提案として、国連の管理下に置くなど提唱したらいい。日本だからできるかもしれないが、実行となると、米国が、イスラエルとパレスチナをどれだけ抑えるかになる。与党3党の幹事長がこの大事な時期に(10日から)イスラエル、パレスチナを訪問するというが、実は冷や冷やで心配している。しっかりした政策、基本理念を持っていないと、いけない。(双方にいい顔していると)冗談ではすまなくなる」(了)


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