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2005年2月23日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.311 Extra Edition2
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http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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▼INDEX▼
■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.27
「クルーグマン対ブッシュ政権」
□ 村上博美 :ワシントンDC在住
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■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.27
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「クルーグマン対ブッシュ政権」
ポール・クルーグマン氏といえば当代きっての人気経済学者である。プリンストン
大教授兼『ニューヨークタイムズ』コラムニストとして、時には厳しく時には茶目っ
気たっぷりに時勢を切りまくっている。彼のように絶大な人気があれば何を言っても
怖いものなしだ。目下のイシューは、ブッシュ政権が打ち出した社会保障年金制度改
革案。ブッシュ大統領も2期目の一般教書演説でこの社会保障年金制度改革案を念入
りにアピールし、精力的に全米を遊説するなど相当力を入れている。
改正案の目玉は、1950年以降に生まれた人は収入の4%(現在の社会保障税の
3分の2に相当)を上限(初年度は上限が1000ドル)に直接個人勘定口座へ積み
立てでき、株式や債券で運用するというもの。つまり、段階的に2009年から国が
民間のファンド運用会社と契約し、年金を市場で運用させるため、過去数十年の株式
運用の実績である6%になることもあれば現在の運用金利3%を下回る可能性もある。
ちなみに、年金の財政が2042年には破綻すると警告するブッシュ政権と、社会
保障税制の改正や受け取り年齢の延長を行えば年金制度は破綻しないという民主党と
で立場が分かれている。よって「絶対反対」を唱える民主党と、内部でも慎重意見も
あるが年金民営化案を推進する共和党のにらみ合いが続いている。そういう中で、ク
ルーグマン氏は民主党寄りの立場から『ニューヨークタイムズ』のOp-ed でブッシュ
案に激しく噛み付いている。
このOp-edとは、Opinion Editorial(論説)欄の略称で、米国の新聞に通常ある見
開き1ページほどのスペースを割いた意見ページのことである。日本の新聞にも社説
や読者の投稿欄があるが、米国のそれとは比べると格段にスペースが限られている。
米国のOp-ed 欄では毎日活発な言論が展開され、読者といってもほとんどシンクタン
ク研究員や学者や元政府高官といった“民間論説委員”が投稿する。熾烈な競争を経
て掲載されたOp-ed は質が高く、人によってはまずOp-ed 欄を読んでからおもむろに
他の記事を読むほどだ。その日のOp-ed が面白ければ、「今日のワシントンポストの
Op-ed 読んだ?」と街中の話題をさらうこともある。
少し話はそれるが、クルーグマン氏のような有名人の場合は定期的にOp-ed 契約を
結ぶなど特別待遇だが、例えば一般のシンクタンクの研究員などは、いくつOp-ed が
メジャーな新聞に掲載されたか、というのが給料の査定になったりするので必死だ。
800ワード程度の意見記事を書き上げ、それを各社のOp-ed 担当者に売り込むのだ
が、1日にものすごい数の投稿が来るのでなかなか目を通してもらえなかったり、そ
のためタイミングを逸してしまったりして掲載にこぎつけるのは結構難しい。
ところでそのクルーグマン氏のOp-ed だが、民主党の主張に輪をかけて毎回強烈な
のだ。例えば2月4日分。彼曰く、ブッシュ案はまるで「年金生活に入る時には残念
だが十分に年金がない。だけど、今貯金しちゃいけない。代わりにお金を沢山借りて
株でも買い、キャピタルゲインを期待しなさい」というものだ。しかも、「実質金利
3%で借りた金の利子分が差し引かれた額しかもらえない」という。2月8日分では、
「ブッシュ大統領は、社会保障年金制度を改革しようとしているのではなく、壊そう
としているのだ」から始まり、「(ブッシュ政権は)時計の針を社会保障のなかった
1932年に戻そうとしている」。ブッシュ政権は財政赤字を半分に減らすと公約に
掲げているが、「金持ちへの減税を撤回するわけでもなく、更に裕福層への税制優遇
を実施」する一方、幼児保育や低所得者層の生活保障予算をカットすることで実現し
ようとしている、と批判する。また、2月18日分では、グリーンスパン連邦準備制
度理事会議長が議会の公聴会でブッシュ政権の年金制度民営化案に基本的に賛成と発
言したことを痛烈に批判。「グリーンスパン氏は(ブッシュ案が)年金財政状況を全
く改善しないことや、財政赤字の危険な拡大に導くことを認めながら、年金民営化に
賛成するという。これは理解に苦しむ!」といった具合だ。その上で、「社会保障年
金の財政難の危機を煽って民営化することは、9.11のテロにかこつけてイラク戦
争を正当化する手口と同じだ」とし、「全く関係ない高齢化と年金民営化を結びつけ
るブッシュ政権の常套手段だ」と容赦ない。
アメリカでは過去最高の4130億ドルの財政赤字を記録し、次の10年の間にベ
ビーブーマーが年金生活に入るといわれている。現在の株式市場からベビーブーマー
の年金資金が撤退すれば、過去数十年の平均6%というリターンが今後も長期スパン
で可能かといえば疑問だろう。個人勘定口座創設のために最初の5年で7430億ド
ルを金融市場から借り入れる必要があるというのだから、最終的には新制度移行に数
兆ドルという単位になるのだろう。グリーンスパン氏が言うように「制度を徐々に移
行させることが重要で、そうでなければ(大量の資金調達によって)金利が高騰し経
済に悪影響を与える」のであれば、施行にも慎重さが要求される。ただクルーグマン
氏も批判に余念がないのだが、民主党陣営から肝心の具体的な対案が出てきていない
ことも、説得力に欠ける一因となっている。
参考:『ニューヨークタイムズ』ポール・クルーグマンOp-edページ他。
<http://www.nytimes.com/top/opinion/editorialsandoped/oped/columnists/
paulkrugman/>
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