2005年4月17日発行
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JMM [Japan Mail Media]                 No.318 Extra Edition2
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    ■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.29
    「ジョン・ボルトン次期国連大使承認騒動」

  □ 村上博美 :ワシントンDC在住

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 ■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.29
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「ジョン・ボルトン次期国連大使承認騒動」

 ワシントンは一年で一番いい季節を迎えている。全米各地やヨーロッパからもワシ
ントンの桜を見に観光客が押し寄せる。日本と違って公共の場での飲酒は禁止されて
いるため、ほろ酔い気分で花見というわけにはいかないが、ポトマック河畔に鈴なり
の桜を見るのは気持ちがいい。

 ブッシュ大統領が次期国連大使に指名したジョン・ボルトン国務次官の承認作業が
米上院外交委員会で行われている。同じネオコンの世銀総裁ウオルフォウィッツ氏の
ときに比べて、任命阻止の運動が高まっている。批判が多く噴出しているのは、公聴
会というプロセスを踏むからだろう。公聴会では、その人物が適任かどうか過去の業
績や今後の取り組み姿勢などについて質疑応答が行われ、委員会で採決の上承認され
る。通常は滞りなく終わるのに今回は特別だ。採決は上院の与党・野党比率により共
和党10人、民主党8人で行われる。民主党は反対で固まっているが、共和党委員の
穏健派チェフィー議員がボルトン氏の支持を表明しているものの、「もし氏の職権乱
用が続いていた証拠があるなら懸念材料だ」と若干立場がゆれている。委員会での採
決が9‐9となれば、上院全体の採決となる。ボルトン氏は4月11日、7時間近く
に及ぶ質問の集中砲火を受けたが、うまく対応してそれほどダメージを受けた印象は
ない。12日には元国務省の高官の証言が行われ、民主党が新たな証人喚問を要請し
たため採決は来週になるようだ。

 12日の証人喚問でもボルトン氏の資質についての攻撃がつづいた。彼は上司には
おべっかを使い、部下を怒鳴り散らす典型的な人間だ、と証言した元国務省情報調査
局の高官は「自分の意見に従わないからって部下をクビにするような人物は、米国政
府を代表する役職には不適当だ」と発言した。2002年当時、兵器管理部門の長
だったボルトン氏は、キューバが生物兵器を開発しているという氏の見方に異を唱え
た情報分析官を解任しようとした。過去にもシリアやイランが核兵器を開発している
という内容の氏のスピーチを、情報部門が情報の信頼性が確保できないとして直前で
中止させたことがある。民主党は、アメリカの情報機関の誤情報がイラク戦争へ導い
たといわれる中で、世界の信頼を得なければならないときに新国連大使が、情報機関
の情報をミスリードするということは問題だ、と懸念を表明。一方、「単刀直入な物
言いは外交上よくないかもしれないが、それが必要なときもある」と委員会委員長の
共和党ルーガー氏。また、「彼のやり方は私のタイプではないが、ここで問われてい
るのは彼の管理態度がどうこうということではなく、如何に国連改革を建設的にすす
められるかの力量が問われているのである」、とも述べた。

 2000年の大統領選挙において、フロリダ州の票集計で重要な役割を果たしたと
言われるボルトン氏は、その忠誠心が認められ国務次官の職を得たが、国務省内部で
は蚊帳の外だったようだ。報道によれば、パウエル国務長官やアーミテージ副長官ら
のミーティングにはあまり参加させてもらえず、パウエル長官もボルトン氏の意見を
取り入れることは稀だったと言う。ボルトン氏は国防総省や国家安全保障理事会や
チェイニー副大統領オフィスと関係が深く、その政治力を使い、国務省の外から影響
力を振るったと言われている。

 ボルトン氏の国連に関する発言を拾ってみるだけで、承認反対派の心情が理解でき
る。例えば、「国連なんてものは存在しない、アメリカの利益に合致する時にのみ、
アメリカが主導して他国がついてくるという国際社会だったらあるが」「もし今国連
安保理を作り直すならば、メンバーは一国(アメリカ)だ。なぜなら、それが世界の
パワーの現実を表しているから」「国連本部のビルの10階程度がなくなっても、全
く気にもならない」「国連総会での決議なんて“理性がマヒ”しているとしか言いよ
うがない」と非情なコメントが並ぶ。

 ボルトン氏不支持派は、「国連に対する蔑視を隠そうともせず、多国籍主義やコン
センサスベースの外交など意味のないものと理解する人物に、どうして国連大使が務
まろうか」や、「いくらひとりで強がり言っていたって、アメリカだけでは何もでき
ない。他の国の助けがいる。国連というところは、アメリカにとって世界安全・平和
という共通の利益を実現する1機関であり、それを尊重しなければならない」「氏の
ような人物を国連大使に選ぶと、ますますアメリカは孤立する」という懸念がある。
ドッド議員は「まるで、雄牛(ボルトン氏)を繊細な食器を売る店(国連)に突っ込
ませるようなものだ」と形容した。あるNGOは、来年選挙を控えた共和党穏健派で
あるチェフィー議員の地元ロードアイランドで集中的にコマーシャルをうち、州民に
ボルトン承認阻止の運動を奨励している。

 一方、ボルトン氏支持派は、「氏の国連に対する強硬な発言は、アメリカ国民が
思っていることを代弁しているに過ぎない」と言う。確かにこれは正しい。基本的に
アメリカ人の目に映る国連は、日本人のそれとは大きく違う。一般のアメリカ人の国
連に対する認識はボルトン氏のそれとほぼ同じだろう。だから「アメリカの利益が重
要なんであって、それを忠実に体現してくれる人物ならOK」という意識が高い。
「他の国なんてどうでもいい、アメリカの言い分をいかに通すかが大事なんだ」とい
うところだ。「ブッシュ大統領も言っただろう。国連改革はうやむやには終わらせな
い、と」というネオコンのビル・クリストル氏は、汚職のはびこる国連の改革にはボ
ルトン氏が最適任だと言い切る。国連は当初期待された役割を果たしておらず、改革
によってもっと信頼できる機関になれば、アメリカの国益にとっても使える、という
見方だ。

 公聴会での焦点は彼が忠実にブッシュ政権のポリシーを遂行できるかである。民主
党はこれまでの発言や管理職としての資質を問題視したが、ボルトン氏が適任ではな
いという強い証拠は提示できそうにない。元大統領安全保障補佐官のスコークロフト
氏は、「ブッシュ大統領からの指示があり」、「それに従うか」という点が国連大使
に求められた資質であるのだから、資質を満たすかと言う点では十分満たすのではな
いか、とコメントした。仮に上院全体での採決になったとしても、共和党55対民主
党45ではボルトン氏の承認を阻むことは難しいであろう。それにしても、公聴会に
おいて政府の重要な役職につく人物がどういう人物か質疑応答を通して浮き彫りにし、
アメリカ人の国連に対する視点も明らかになる点は大変興味深い(公聴会の様子を全
て無カットで流すCSPAN(議会中継TV)はインターネット(www.cspan.org)で
も閲覧可)。ブッシュ政権がそういう人物を送り込んでまで成し遂げたい「仕事」は
国連改革であり、国連脱退も辞さないというアメリカの世界に対する最後通牒ともと
れる。

参考:CSPAN( HYPERLINK "http://www.cspan.org" www.cspan.org), Washington
Post, NYTimes, The Weekly Standard, The Baltimore Sun, the Boston Globe,
‘Stop Bolton’( HYPERLINK "http://www.stopbolton.com" www.stopbolton.com)


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