2005年9月26日発行
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JMM [Japan Mail Media]                  No.342 Extra Edition
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     ■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.33
    「カレン・ヒューズと対米感情」

  □ 村上博美 :ワシントンDC在住

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 ■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.33
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「カレン・ヒューズと対米感情」

 秋風の吹くワシントンでは、24日の土曜日、イラク戦争が始まって以来最大の1
5万人とも30万人とも言わる反戦デモが、ブッシュ大統領・チェイニー副大統領不
在のホワイトハウスの前で行われた。他国への侵攻のために金を使うが、ハリケーン
・カトリーナでは国民の面倒さえまともに見れないという批判と、イラクからの米軍
の撤退を求める声が多く、ブッシュ政権のイラク政策は重要な局面に立たされている。

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 ハリケーンのニュースにかき消されてしまったが、今月9日ブッシュ大統領はテキ
サス州知事時代からの側近中の側近、カレン・ヒューズ元大統領顧問を広報外交担当
の米国務次官に任命した。カール・ローブ大統領補佐官以上に大統領への影響力が大
きいと言われる彼女は、ブッシュ大統領に向かって歯に着せぬものいいができる唯一
人の人物であり、ライス国務長官よりブッシュ大統領の懐に近いといわれている。9
日の国務省で行われた就任式には大統領自ら出席し、しかも熱のこもったスピーチを
披露。その横には、コンディ・ライス国務長官が微笑み、ローラ・ブッシュ大統領夫
人とカレン・ヒューズ国務次官という鉄の女性軍がブッシュ大統領をとり囲む様子が
TVで中継された。

 ヒューズ氏は1994年からブッシュ陣営の広報担当として、テキサス州知事選挙
や大統領選挙を通して現ブッシュ大統領を助け、大統領就任以降も何かといえば頼れ
る存在となった。というのも、スピーチライターや選挙のブレーンとしてだけでなく、
大統領の外遊には数多く同行し、そしてホワイトハウスにて大統領顧問として18ヶ
月間ブッシュ大統領の期待に応えてきた。2002年に「家族との時間を大事にした
い」として辞任したときは、メディアも一斉に驚きをもって取り上げた。

 カレン・ヒューズ氏は、一見「アメリカの肝っ玉かあさん」風で、存在感のある女
性である。今回就任した国務省の広報外交の任務は、特に中東イスラム圏での対米イ
メージを改善することにあり、選挙キャンペーンの実績を理由に抜擢。ブッシュ大統
領は、一番信頼する人物に要の中東政策のスポークスウーマンをやってもらいたいの
だ。だから、息子のスタンフォード大学入学までは家族で過ごしたいという「家庭の
事情」を聞き入れ、就任するまで9ヶ月も空席のままポストをあけておいた。しかし
今年の3月に指名を受けた時点より、イラク情勢や中東の対米感情が悪化しており、
前途多難な出発となった。

 そんな中で「あまりにも間違った情報が多い」と嘆く彼女が打ち出したプランは、
まず『クイック・リスポンス・センター』の創設で、アル・ジャジーラやアル・ア
ラビアといったメディアを常時モニターし、もし米国の政策に関して間違った情報
が流されている場合にはすぐ対処するというものだ。また、『4‐E政策』
(engagement, exchanges, education and empowerment)を掲げ、中東地域で影響
力のあるジャーナリストや宗教関係者を招待し直接アメリカを自分の目で見てもら
う、という。中東の知識も外交の経験もない彼女の国務次官就任を疑問視する声も
あるが、ブッシュ大統領は手放しで彼女の能力を絶賛。彼女が適任なのは「熱血漢
で祖国に対する人一倍深い愛情」を持っているからだ、と。ではヒューズ氏はどん
な考えの持ち主なのか。

 国務省でのインタビューで「(ハリケーン被災地の)犯罪や強奪の話を聞き、同
じアメリカ人として吐き気がした」、「肌の色や貧富の差によって救助に差があっ
たと報告されているが、そういうことはアメリカではあってはならない。アメリカ
はそういう国ではない」、というように祖国に対する理想は人一倍高い。対米感情
の悪化については、「アメリカは世界で唯一のスーパーパワー。だから、尊敬され
ることもあればやっかみもある」。トーンとしてブッシュ大統領と共通するのが
「アメリカの民主主義の理想が万人にとってよいもの、誰だってアメリカのように
自由を謳歌したい」という見解だ。「コミュニケーションがうまくいっていないか
ら、アメリカの理想が誤解されるのだ、正しく理解してくれたらアメリカの言う自
由がどんなにすばらしいかわかるのに」、と。

 一方、この視点に警笛を鳴らす人たちは「ヒューズは、ラディカルな世界観をも
つ人たちの理想と戦うことがどういうことかわかっていないようだ」と言う。ある
識者は、「共産主義との戦いは、近代化という価値観を共有した状態での2つのシ
ステムの競合だった。ジハードの理想は反近代化であり、我々とはその方向性さえ
共有していない。我々が高いコストを払って認識し始めているのは、イスラム圏の
近代化に対する強固な抵抗だ。エジプトの例を見るまでもなく、近代化は必ずしも
人々によりよい生活を約束していないのだ」。「ヒューズの言う『自由』とアヤト
ラ・アル・シスターニの考える『自由』とは大きく違う」。つまり、その違いを理
解しない限り、どんなに影響力や資金があろうとも無意味であり、アメリカの政策
を宣伝することは、かえって対米感情の悪化を加速するということになると主張す
る。またある識者は、「対テロ戦争とは、イスラム世界の中における知的・宗教的
価値観の戦いであり、近代的な生活を望む穏健派と、イスラム法に基づく生活への
回帰を説く過激論者との戦いだ」。よって、ただメディアをモニターしたり、イス
ラム世界に影響力を与えるよう努力するだけでは不十分で、穏健派を勝たせるため
にアメリカが積極的に関与しなければ、という。

「ブッシュ政権もやっと、鉄砲より人々の心情が大事だと遅ればせながら気がつい
た」と皮肉る声もあるが、ブッシュ大統領が称賛する『熱血漢』の言葉通りヒュー
ズ氏は就任以来、精力的に国内のイスラム・コミュニティでのタウンミーティング
を行い、中東地域へも早速足を運んでいる。公聴会で答えたように「あなたたちが
何を信じ何を恐れるのか、何が夢で何が一番大事なことなのかを真摯に学びたい」
という、ヒューズの前向きな姿勢が、中東イスラム圏の対米イメージを改善できる
のか、それともますます対米感情が悪化するのか、これからが正念場である。

参考:Washington post, Pittsburgh Post-Gazette、The Houston Chronicle他。


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