2005年10月16日発行
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JMM [Japan Mail Media]                 No.344 Extra Edition3
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      ■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.34
    「ハリエット・マイヤーズと保守派分裂」

  □ 村上博美 :ワシントンDC在住

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 ■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.34
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「ハリエット・マイヤーズと保守派分裂」

 先日、亡くなったレンキスト連邦最高裁長官の後任としてジョン・ロバーツ氏が就
任したが、サンドラ・オコナー最高裁判事の後任として、ブッシュ大統領はテキサス
時代から旧知の女性弁護士で大統領の法律顧問であるハリエット・マイヤーズ氏(6
0歳)を指名した。ところが、この指名に関して身内である共和党右派各派から痛烈
な批判が続出。この指名をきっかけにブッシュ政権の支持母体である保守派内部に亀
裂が入っている。

 例えば、ウィークリー・スタンダード紙のビル・クリストルは「話にならない」。
保守派コメンテーターのジョージ・ウィルやチャールズ・クラウトハマーは「縁故主
義そのもので、最高裁判事の資質には遠く及ばない」と切り捨てる。マイヤーズの人
選を支持するのは保守派の54%しかないという調査もでている。それに対し、ロー
ラ・ブッシュ大統領夫人は「女性蔑視だ」という批判で応酬する事態となっている。

 ところが、理由がどうも釈然としない。判事の経験がないことが不満の一つに挙げ
られているが、過去に35人以上が判事経験がなく最高裁判事に就任しており、それ
が死活的な条件とはならない。事実、先日亡くなったレンキスト最高裁長官は判事経
験がなく、後任のロバーツ氏もたった3年しか経験していない。「60歳の人を指名
するより、もっと長期にわたって保守派を主流として確保するために、もっと若い人
を指名すべき」という批判もあるが、だからといってマイヤーズが不適格だという決
定的な理由にはならない。

 どうやら彼女が独身である、ということが共和党右派のネックになっているらしい。
つまり、共和党保守派にとって結婚して家庭を築くことが根本的な価値観であると
ブッシュ自身も力説してきた。福音派に属するだけでは保守派は納得しない。更に
「彼女は保守派というが、いったいどういう保守派なのかが私たちにとって重要」と
する右派は、女性の人工中絶を憲法上合法とした1973年の Roe?Wadeケースに、
明確に反対を示さなければ受け入れられないという。しかし、マイヤーズ自身は中絶
反対の活動家らとは距離をおいているようだ。一方民主党を中心に、マイヤーズ氏の
所属するキリスト教福音派が保守的だと問題視している。この派はプロライフ、つま
り人工中絶反対を掲げていることから、女性の権利を守る団体らが懸念を表明してい
る。このように、民主党からも警戒され板ばさみになっているのが実情だ。

 一方で、地元ダラス市のゲイ・レズビアンコミュニティは、マイヤーズが過去にゲ
イ・コミュニティに関する仕事をしたことから指名を支持。また、産業界は「会社法
に明るい初の最高裁判事」として期待を高めている。テキサス州でマイヤーズは会社
法を専門とする弁護士事務所を経営し、マイクロソフトやウォルト・ディズニーと
いった企業の集団訴訟や特許侵害などを対応したからだ。法律雑誌の全米のトップ5
0及び100人の弁護士リストに名を連ねたこともあり、訴訟弁護士としては敏腕だ。

 やはり民主党やその他が問題視するのは、マイヤーズが大統領に近すぎることであ
り、彼女の「大統領は私が今まで会った男性の中で一番ブリリアント(すばらしい)」
という発言については「マイヤーズ氏の客観的判断力に疑問を感じざるを得ない」と
あるコラムニストが書いている。また、マイヤーズがあまりにも大統領に傾倒してい
るため、最高裁が、立法(議会)や行政(ホワイトハウス)からの干渉に独立でなけ
ればならない三権分立が確保できるのか、という懸念もあがっている。またブッシュ
政権内でイラク人人権無視や拷問が公然と行われていた時、マイヤーズは政権内でど
んな役割を担っていたのか、公聴会で明らかにされなければいけない、とも。

 連日批判の波にさらされるマイヤーズ氏とはどんな人物か。仕事ぶりは「完璧主
義」。日曜日も教会の後必ずオフィスにつめ、大統領への書類は全て彼女が目を通す。
「彼女のところで仕事が止まる」と彼女のやり方に不満をもつ者もいたようだ。が、
彼女の経歴を見てみると、70年にサザン・メソジスト大学法律大学院を卒業後、7
2年にはダラスの大手法律事務所に初の女性弁護士として迎えられ、85年にはダラ
ス市弁護士協会の女性として初の会長に就任、92年にはテキサス州弁護士協会初の
女性会長、そして96年には200人の弁護士を抱えるロック・パーネル法律事務所
の初の女性トップとなるなど、テキサス州の女性弁護士として数々のガラスの天井を
突き抜けてきた。2001年に大統領の補佐官としてワシントンに赴いた時は、やや
経歴上見劣りがしたもののブッシュ大統領の絶大なる信頼を勝ち取った。かつての同
僚などの話から浮かんでくるマイヤーズの人物像は、自分のエゴを通さない、必要な
ときに最低限の発言をし、対立点などをうまく調整する、といったものだ。ローラ夫
人も「公聴会になれば、彼女がどんなに尊敬できる人間かわかるでしょう」と太鼓判
を押す。

 ブッシュ大統領は「彼女は信頼できる人物。今から10年20年たっても彼女が変
わらないと断言できる。それが私にとって最も重要なことだ」と述べた。パット・ブ
キャノンなどの超保守派は経験もないマイヤーズに憲法判断はできないと、指名を取
り下げるよう主張。しかし、ブッシュ大統領の性格からすれば指名を取りやめること
は考えられず、激しい非難を繰り返すことでマイヤーズ自身の指名辞退を望む右派は、
どうやら期待外れになりそうだ。保守派右派による批判は、単にマイヤーズ指名だけ
ではなく、これまで鬱積してきたブッシュ政権への不満が爆発したという見方もある。
ブッシュ大統領は保守派を結束させている本来の保守的価値観から離脱しているので
はないか、と。どちらにしろ、近々行われる上院での公聴会が次の大きな山場となる
だろう。

参考:LA Times、Omaha World-Herald、Washingtonpost他。



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