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2005年11月24日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.350 Extra Edition
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http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.35
「イラク駐留米軍の早期撤退論」
□ 村上博美 :ワシントンDC在住
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■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.35
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「イラク駐留米軍の早期撤退論」
感謝祭を控えた米下院・上院において、イラクからの米軍撤退の議論に火がついた。
爆弾会見を行ったのは、両党から一目置かれパープルハートを2つも受賞した元海兵
隊で民主党タカ派のジョン・マーサ下院議員だ。17日の単独会見ではこぶしをふる
わせながら、イラク戦争は「幻想につつまれた欠陥政策だ」と言明。彼は「軍隊のや
るべき使命は終わった」とし、地域に新たに局地的な攻撃に対処できる米軍の再配備
の代わりに、現在の米軍を6ヶ月以内に撤退させる計画を提案。老練で威厳あふれる
ベトナム戦争の退役軍人であるマーサ議員は現在73歳。1975年から米下院議員
を務め、防衛予算委員会などを歴任する民主党の重鎮の一人だ。戦場での勇敢な働き
を称えるV字入りの銅メダルやベトナム戦争での武勇に対する十字勲章を受賞し、党
を超えて多くの議員の尊敬を集めるペンシルバニア州選出議員だ。
マーサ議員は会見の中で「5回も徴兵猶予をし戦争に行ったこともない連中が、人
を戦場に送る。しかもその連中は私たちからの提案を聞こうともしない」とチェイニ
ー副大統領を個人批判。それに対し、チェイニー氏は21日の市内シンクタンクでの
講演で、イラク開戦に賛成したくせにそんな発言をするのは「不誠実で非難されるべ
き」言動だと返した。その上クリントン政権が(テロリストの問題に)ちゃんと対処
しなかったから9.11のようなことが起こったと民主党を批判。ブッシュ大統領も
イラク開戦の判断をした際「私たちと同じ情報にアクセスしていたはずだ」と外遊先
から会見。マーサ議員は「大量殺戮破壊兵器があると私は本当に信じていた。(イラ
クと)アル・カイーダとの関係も関連があると信じていた。ところが、それが真実で
はなかった」と述べ、それと同時に2004年に発行した著書の中で「誤情報によっ
て始められた戦争でも、政治的観点からの時期尚早な米軍撤退はかえって事態を悪化
させ内戦に突き進んでしまう」とも述べていた。ところが今年になって米軍兵士がタ
ーゲットになっていることをイラクで目の当たりにし、考えが変わったという。
マーサ議員はイラク戦争当初から負傷した兵士への病院訪問を欠かさず続けている
が、帰国した兵士らの境遇が如何にひどいかを目に涙をためながら力説。彼は「私は
減税案には全て反対票を投じた」と、戦争を戦いながら3年連続で減税をする共和党
の政策に疑問を投げかけた。そのしわ寄せは、祖国のために戦い両足を失った若い兵
士にきているのであり、祖国に帰れば虐げられ治療費の請求に追われるというのは何
か間違っている、と述べた。「それでも兵士達は誇りをもって祖国のために戦うと
いっている。兵士たちは何も言わない。だから私が代弁する義務があるのだ」と。
ホワイトハウスは、即時撤退案は「まるでテロリストに降参するようなものだ」と
反論。当初、マイケル・ムーアと同列だと批判を展開したが、かえって逆効果になる
と考えたのかホワイトハウスはトーンを弱めた。共和党員でもマーサ議員の心情に共
感を覚えるものもいる。新人の共和党議員からのマーサ議員に対する個人攻撃を見か
ねた他の共和党議員からは「(国のために戦ったマーサ議員を辛らつに批判するなど)
恥ずかしいと思わないのか」との声も。クリントン元大統領もそのやり取りの最中に、
個人攻撃はお門違いだとマーサ議員を擁護。
そういうマーサ議員の思い切った提案に対し民主党内の議員の意見は分裂気味。他
の民主党議員も即時撤退ということに同調すれば、国家安全保障問題に弱腰だと烙印
を押される上、即時撤退ではイラクの情況は取り返しがつかないほど悪化するという
見方が大方だ。優柔不断な民主党を横目に、下院共和党は「反戦を掲げる民主党は前
線の兵士を支持していない」と国民に印象づけるため、あらかじめ通過しえない即時
撤退案の採決を行い、賛成3対反対403で否決させた。ここでマーサ議員を含む大
多数の民主党議員は反対票を投じた。民主党が何よりも恐れるのは、国の安全保障危
機時に国民から信頼されなくなることだ。
民主党の中道派や外交問題に詳しい議員らは、米軍の撤退の明確な時期を提示する
ことはイラクの安定や政治的観点からも民主党のためにならないと思っている。例え
ば上院外交委員会のメンバーであるジョー・バイデン議員は、民主党としての提案を
まとめる中で米軍撤退の時期を明確化すべきでないと繰り返し主張している。バイデ
ン氏やジョー・リーバーマン上院議員は、時期尚早な米軍のイラクからの撤退は、内
戦の兆しを見せている現状を終わらせるというよりは更に悪化させると認識しており、
またアル・カイーダが中東地域において米国及びその同盟国に対し勝利宣言を行う言
質を与えてはいけないと主張する。21日ニューヨークの外交評議会の講演でジョー
・バイデン上院議員は、マーサ議員の提唱する即時撤退には賛同しないが、「我々の
基本的なミッションを再確認すべきだ」と述べた。つまり、1)戦前より悪い状態、
つまりイラクをテロリストの巣窟にしないこと、及び2)内戦を地域紛争に拡大させ
ないこと、が重要だと述べた。つまり、米軍が引けばイランがシーア派につき、シリ
アやサウジがスンニ派につくとも考えられる。トルコがクルド人につくとすれば、第
一次世界大戦中東版といった近隣諸国を巻き込んだ戦争に拡大することを恐れている。
マーサ議員ほどのドラスティックな案はだされなかったものの、15日には上院で
も「2006年に段階的撤退の条件を整備する」よう求めた条項を賛成79対反対1
9で可決したほか、ホワイトハウスから議会に対し90日毎に詳細な政策と軍事作戦
について包み隠さず報告するよう義務付けた。先月ジョン・ケリー上院議員は、ベン
チマークを設けて米軍が段階的に撤退する案を提唱。例えば12月15日のイラクの
国民議会選挙がうまくいけば2万人撤退させるというようにすれば、来年末までには
主要な戦力の大体が撤退できるとした。カール・レビン上院議員は、イラク政府内で
のシーア派、スンニ派、クルド人勢力の調整問題を解決しなければ、米軍を退却させ
ると米国政府が圧力をかける方法を提案。もし12月の選挙がうまくいけば、イラク
が安定しつつあることを示すバロメータとなり、ブッシュ大統領は議論の方向をコン
トロールできるようになるだろう。しかし、もし暴力が引き続き顕著で部族間の亀裂
が深くなれば、既に米軍関係者の死者は2082人に達していることも考えると、米
軍の早期撤退論は更に高まるだろう。
CNN/USA Today/Gallup Poll による共同世論調査によれば、33%が米軍のイラク
からの撤退を2006年末までにすべきだと考えている。民主党支持者の中では実に
67%が1年以内に撤退すべきだと考えている。マーサ議員の爆弾発言は、イラクか
らの出口戦略の議論を明らかにシフトさせた。来年の中間選挙を視野にますます具体
的な案が議論されることになるだろう。
参考:LATimes, NYTimes, Washington Post他。
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