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2006年2月18日発行 当日、NYTimesがブッシュ政権の極秘盗聴プロジェクトを暴露したことがきっかけだ。NY Timesは、愛国者法の改正内容が個人のプライバシー侵害に拍車をかけるという懸念から、 ブッシュ政権に対する明らかな法案決議妨害行為として爆弾記事を掲載。それ以降、特別裁 判所の令状なしでテロに関わるとみられる国内の容疑者への当局の盗聴・傍受といった監 視行為の合法性の有無が問われている。それ以上に大統領による権力乱用は憲法違反で
はないかと議論は真っ二つに割れている。 受には非公開のFISA裁判所からの令状が必要とされているが、問題はブッシュ大統領はじ め政権内部はテロ戦争下の大統領権限でFISAを通さずに国家安全保障局(NSA)の極秘 盗聴プロジェクトを指示していたことだ。FISAは大統領に対し、テロリスト容疑者に対する盗 聴を可能とする必要な法的枠組みを与え、しかもFISAは盗聴・傍受行為を開始してから3 日後に事後令状を要求すればよいとしている。ブッシュ政権はその令状をとることなく監視を
行っていた。 あるという容疑があれば令状なしで国内からの国際電話及び電子メールの通信の盗聴・傍 受を行うものだ。ブッシュ政権側は、軍の最高司令官であり最高執行官である大統領には 憲法の下でNSA盗聴プロジェクトを承認する法的権限がある、としている。特に2001年9. 11テロ攻撃以降に議会が採択した武力行使容認決議で、大統領の憲法上の権限を確認し 補足したと主張。それまでは表舞台に一切出なかったNSAの長官までもが朝のTV番組に 出演しブッシュ政権を擁護。「なぜFISAで対応しないのか」とのキャスターの問いに、長官は 「FISAではプロセスに時間がかかり、早急に対処しなければならない情況には不向きだか ら」と政権の立場を繰り返した。FISA特別裁判所を通さないでブッシュ政権が行ったこの盗
聴プロジェクトに抗議して、既にFISA裁判所の判事が一人辞任している。 と、大統領には「9.11テロ攻撃を補助、又は行使、承認、計画した国・団体・個人に対して、 またそれらの団体や個人をかくまった国や団体に対し、米国に対する次のテロ攻撃を予防
するために、全ての必要で適切な武力を使う」権限が与えられている。ブッシュ政権はこれ は1978年にできた法律なので、現在アメリカが直面する脅威には対処できない」うえ、政 府の弁護士が特別裁判所で国内盗聴を行うにあたり令状を必要とするFISAは「厄介」だか らと述べた。ゴンザレス司法長官も「NSAの盗聴プロジェクトは次のテロ攻撃を防ぐために 一刻を争う重要なものだ。だから少しの遅れが致命的になる」とし、令状なしの盗聴行為の 正当性を主張した。ブッシュ政権は議会と情報を共有することに難色を示し、共和党内部か
ら沸きあがった批判に対し法改正は必要ないと主張している。 2)盗聴プロジェクトに関する情報を少数の議員にしか伝えず、しかもFISAを無視し大統領府 と同等の権限を持つ議会の役割を軽視したことである。一方政権側はこの極秘プロジェクト の存在がリークされたことを「国家の安全を著しく危険に陥れた」機密情報漏洩問題として断
固として調査すると言明している。 は、という点については、チェイニー副大統領は「国の安全のためには(盗聴は)必要なこと だ」と切り捨てた。出演したラジオ番組でも議会とは法的な争いには決着をつける気がない ことを示唆。「我々(政権)は既に(令状なしで盗聴できるという)法的な権限は持っている」 としてこれ以上法的な手続きを踏めばセンシティブなオペレーションの内容を暴露することに なり、本来の(目的であるテロから国民を守るという)プログラムに支障をきたす」や「他国の 情報機関に秘密が守れない米国とは仕事ができないといわれるではないか」と反論した。 少数の議員にだけブリーフィングしていたことについて、チェイニー副大統領は「535人全て の議員にブリーフィングして国の秘密を守れというのは無理がある」と開き直った。チェイニー 大統領はその極秘ブリーフィングにほぼ出席していたが「大体、誰も更に法的な手続きが必 要だと懸念を表明した人物はいなかった」。それに対しブリーフィングを受けていた議員の一 人は日曜日政治番組に出演した際、「その会合ではオペレーション上の話ばかりで,法的枠 組みの議論は最後の一回をのぞいて一切なかった」ため憲法違反ではないかという考えに 気が回らなかったと弁明した。バートレット報道官は「(FISA)改正について議論すれば新た にオペレーション上の詳細を開示することになりかねない。それでは、我々が具体的にどう監
視するか敵に教えるようなものだ」と、徹底抗戦の構えだ。 9.11直後の決議は盗聴の合法化を意味しない」、リンゼー・グラハム共和党議員も「どの大 統領にもFISAを通さないで何でもできるという権限を与えた覚えはない」と言明。NSAを監督 する小委員会の委員長を務めるウィルソン議員は「武力行使の議会決議によって、テロ戦争 に関わる限り大統領が何をしてもよいという理解は、拡大解釈のしすぎだ」と述べた。彼女が 議会による全面調査の必要性を訴えた直後に、ホワイトハウスは上院・下院両議院の情報
特別委員会全員にNSAプロジェクトについて急遽ブリーフィングを行った。 られた憲法上の権限を超えるものだと非難。今後のどの政権においても1978年のFISAで 設置された特別裁判所からの令状を取得しない国内の電話や電子メールによる通信の盗 聴・傍受に断固として反対との声明を出した。40万人の会員を抱える全米弁護士協会は「も し大統領がFISAという法律がアメリカ国民を守るために不適当だというのなら、議会に改正 を求めるべきだ」とし、更に議会に対しては「ブッシュ政権が戦争に行くことを承認したのであっ
て、令状なしの盗聴を支持したわけではない」と再度確言することを要望した。 の情報機関を念頭においた盗聴を想定しており、テロではなく外国スパイがターゲットの中心 であった。FISAはカーター政権時から施行されているが、実は現在にいたるまで何度か改正 されている。例えば1995年の改正では、特定の条件下で政府による電話を含む通信の監 視を可能にしたり、特別裁判所を設けたりした。また事後報告の期間も24時間から72時間後 に延長されている。実際にクリントン政権ではFISAの適用範囲内で盗聴が行われたことを指 し、現行法の範囲内で十分可能だという主張もある。ブッシュ政権はFISAでは現在のテロの 脅威から国民を守れないと強調するが、極秘プロジェクトの実際の効果については疑問の声 もある。例えばあるFBI捜査官は「NSAが行っている盗聴は情報が多すぎて非効率だ」とし、 仮にテロにつながる情報をプロットできたとしても、違法に集めた情報は裁判では通用せず
犯人を有罪とする証拠にならないとしている。 事だったランバース氏は「9.11以前にもオサマ・ビン・ラデンに関する盗聴申請に対しては 何度も許可を与えてきた。ずいぶん前からアル・カイーダは特定の外国勢力として認識され ており、アル・カイーダとの関連性を示せば盗聴の令状を取るのは簡単だったはず」と述べて いる。更に愛国者法によって検察はFISA令状を取るのが更に簡単になったという。なぜ大統
領はそれほど大変とは思われない令状申請を行わなかったのか疑問の声もあがっている。 ラハム上院議員は1803年の判例(Marbury v. Madison)を引き合いに出して、今回の論争は 違憲立法審査権(裁判で適用する法令を審査し欠陥のある法令の適用を拒否する裁判所の 権限)の論争の現代版だと形容した。グラハム議員とアーレン・スペクター上院議員はブッシュ 政権にNSAプロジェクトに対してFISA裁判所などでその合法性を審査するよう主張。共和党 スペクター議員は全ての盗聴案件について非公開の情報特別裁判所で違法か否か承認を得
るべきだと提案し、ブッシュ政権は難色を示している。 的な協議なしでNSAプログラムを指示したことを問題視しており「行政府と議会は機関として 対等の関係にあり、議会は行政府を監督するという重要な責任を持っているのだ」とコメントし、 少数の議員にブリーフィングしたことで議会に協議したと正当性を主張するブッシュ政権を暗に
批判した。 シュ大統領の国内盗聴は、大統領が憲法の下で既に与えられている権限の範囲内だ」とし、 議会が蚊帳の外におかれたことでいちいち目くじら立てるなと一喝。また「議会はその規約に おいて大統領の憲法上固有の権限を消滅させることは不可能」であり「ジョージ・ワシントン大 統領の時代から国家安全保障に関わる敵の脅威に対し通信の傍受はこれまでも行われてき
た」と主張。 会において現司法長官のゴンザレス氏はプロジェクトの合法性についてアシュクロフト元司法 長官とコメイ元司法副長官とは意見が食い違うとしながらも、ブッシュ政権を擁護した。コメイ 元副長官が極秘プロジェクトへの署名を拒否したので、アシュクロフト長官の病床まで行って 署名させたという噂も流れていることから、民主党議員らはスペクター委員長に対し元司法 長官と元副司法長官の証人喚問を要望している。民主党のシューマー上院議員は「問題は、 司法省が大統領個人の法律事務所のような役割を果たしていることだ」とし、ブッシュ政権と司 法省の独立性に疑問を呈した。上院司法委員会の役員であるリーヒー議員も「残念ながらゴ
ンザレス氏は、未だに大統領の司法顧問を務めているつもりのようだ」とこき下ろした。 を政治的に用いて政策の正当性を主張する「不快なパターン」が見受けられると批判し、イラ ク戦争へと導びいた情報の信頼性にも疑問を投げかけた。元CIAアナリストはイラク戦争で 情報機関が政治的ツールに使われたとし、機密情報に基づいて政策が決められたのではな く、既に決められた政策を正当化するために使われたと証言。それを受けて情報特別委員会 のメンバーは「情報機関の本来の役割が無視されていたとは。しかも、我々の情報特別委員 会がその状況の全体像をつかめないまま、判断を下していたということは残念なことだ」と発 言した。ロックフェラー氏は、ブッシュ政権から極秘ブリーフィングを受けた少数議員の一人で あるが「米国情報機関の本来の独立性は、ホワイトハウスの強力な管理下に置かれている」 と嘆いた。連邦最高裁にも超保守派のアリート、ロバーツ両判事を最近送り込んだばかりの ブッシュ政権が影響力を振るうことは自明である。ブッシュ政権の対応を見れば司法、行政、 議会(立法)の独立・対等性に疑問符がつくことは避けられず、国民及び議会が納得できる 解決策が示されるのか、また国家安全保障のためにどこまで個人生活への政府の介入を許
すのか、という米国の基本的価値観を問う問題になりそうだ。 |
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