2006325日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JMM [Japan Mail Media] No.367 Extra Edition2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
http://ryumurakami.jmm.co.jp/
━━AD━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
囁かれるドル暴落、拡大する米国「双子の赤字」、日本国の借金800兆円突破…
躍進する中国・インドが世界経済のルールを変える!!
本日発売   『東 西 逆 転』 クライド・プレストウィッツ著
アジア・30億人の資本主義者たち
<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140810769/jmm05-22>
ベストセラー『日米逆転』の著者が警鐘を鳴らす、21世紀のパラダイム・シフト
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━AD━━
▼INDEX▼
 
■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.39
  「東西逆転」
 
□ 村上 博美 :ワシントンDC在住
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.39
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
「東西逆転」
 
  「ドルの価値が半分になったら、日本はどうするのかな」
 
  「それはつまり、日本の持っているドル資産が半減するだけでなく、アメリカの
軍事力が縮小し米軍が日本周辺を守ることもできなくなるということだ」と今後6、
7年以内にドルの暴落を含む国際経済危機が起こる可能性について刺激的に語
るのはクライド・プレストウィツ氏である。
 
  インド・中国の台頭ともあわせて、アメリカの相対的な衰退に危機感を持つ本
がいくつか売れている。ちょうど日本語版が発売になるのでプレストウィッツ氏に
よる『東西逆転 アジア・30億人の資本主義者たち』をご紹介しよう。私の上司
でもあったのでその人となりもあわせてJMMの読者にご紹介したい。
 
  氏は17年前に『日米逆転』という本を書いたので覚えておられる方もいらっし
ゃるかと思うが、レーガン政権で日米通商摩擦の交渉を担当していた人物である。
その当時、「君の仕事はこの膨大な250億ドルの貿易赤字を減らすことだ」と商
務長官からいわれたそうだが、今日では増えに増えて8000億ドル、米GDPの
6.4%という前代未聞のレベルに達している。財政赤字もふくらんでおり、「アメ
リカ経済は外国からの資金流入という生命維持装置に依存しなければ生きていけ
ない状態で、ある時点で持ちこたえられなくなる」と警告する。
 
  つまり、世界の経済成長はこの驚異的なアメリカの貿易赤字の増加によって支
えられており、アメリカ人の消費は中国や日本といった国から借りた金に依存して
いる。確かに、他の国が成長することは結果的にアメリカから買ってくれるようにな
るのだから心配するなという意見もあった。しかし、その論理が正しければ、過去
50年の間に奇跡的に貧しい国から豊かな国になった韓国や日本が巨大な消費国
になっているはず。だが「現実は未だにアメリカが世界で唯一の消費超国であるこ
とに変わりはないではないか」と氏は指摘する。
 
  確かにアメリカ経済は消費を中心にした成長構造になっている。つまり、クレ
ジットカードは簡単に発行され、住宅ローン金利の課税は免除、輸入品にオープ
ンな市場であり、金融政策で需要を喚起して成長を促す政策など,その他あらゆ
るインセンティブが消費を奨励するよう方向付けされている。その結果アメリカ人
の個人貯蓄はゼロであり、既に世界の貯蓄のうち約80%を使っているアメリカは、
高い金利で外国から金を借りている。もちろん、貯蓄自体に限界があるためこの
状態が永遠に続くことは不可能だ。氏曰く、仮にしばらく維持可能だとしても、負
債の蓄積はアメリカだけでなく世界の経済成長への脅威となるだろう。
 
  中国や日本が資金を貸してくれる以上、この状態を続ければいいではないかと
いう声も多い。確かにアメリカは国際通貨であるドルを印刷する国として特異な立
場だ。世界のほとんどのモノはドルで値段がつけられておりアメリカはそれを買う
ためにドルを印刷すればいい。そして他の国は何かを売ってドルを得なければなら
ない。世界の国々がドルでの支払いを受け入れ、それをドル資産に再投資する限
りアメリカはどれだけ貿易赤字や財政赤字を垂れ流してもいいのだ。
 
  他国までもが、アメリカは財政を均衡させる必要性がないと感じていることに、
氏は懸念を抱く。アメリカを見てみれば、貯蓄や投資やモノ作りをしなくても、他
国からモノを買ったり金を貸してもらえるのだ。また他国から見れば、為替レート
を管理してドルを強く保ち、自国の輸出値段を安く保てば、更に貯蓄を増やし過
剰な投資もできる。なぜなら余剰に製造したものはアメリカ市場へ売ればいいか
ら。但し氏は、この世界経済成長スキームに限界がきている、という。
 
  現在日本はドル資産を1兆ドルほど保有し、貿易黒字が続けばそれは更に増
えていく。2010年には2兆ドルに達してもおかしくないだろう。中国や韓国,台湾,
シンガポールも同様だ。これらの国々は、アメリカ人に金を貸して本来より高い生
活水準を維持させている。生産拠点の海外流出が続き「空洞化」が進んだアメリカ
には、人民元を切り上げても残念ながらもはや貿易赤字を半分にするような生産
能力も残っていなければ、輸出するモノもないと嘆く。付加価値の高いハイテクや
サービス業ですら中国やインドへ移動している。そんなアメリカの巨額の借金の
金利支払い能力に疑問がつけば、これらの国がドル資産を減らす時が近々くるだ
ろうと予測する。その時ドルは主要な国際通貨ではなくなり、石油は円やユーロ・
人民元・ドルのバスケット通貨で値段がつけられ、米国は貿易赤字を垂れ流すこと
は不可能となる。もし今何か手を打たなければ、世界経済は金融危機か恐慌に
見舞われるだろう。これまで確かだったことが音を立てて崩れる前人未踏の時代
に足を踏み入れたのだ。
 
  既に世界のGDPの15%を占める中国とインドは高度経済成長時代に突入し
た。旧ソビエト連邦諸国を含めた30億人が世界経済に参入し、これまでにない革
命的インパクトを世界経済に与え始めている。重要なのは数%の驚くほど高スキ
ルな科学者やエンジニアであり、日本や欧米と同じことを3分の1のコストでできる
プロフェッショナル達だということ。氏が身近にこのことを実感したのは、ITエンジニ
アに育てた失業中の息子の言葉だった。スノーモービルの会社に投資するのはど
うかと相談され「IT専門家なのにそんな仕事」と一笑に付した氏に彼は真顔で言っ
た。「パパ、 雪はインドへ行かないんだよ」。
 
  第二の革命ともいえるインターネットや宅配サービスの普及で時差や距離はも
はや障害ではなくなった。インターネットがあれば、デジタル化できるもの全てが2
秒で世界中のどこへでも送られる。現在高給をもらっている日本や欧米のサラリー
マンはどうやって競争するのか。そのうち、インドや中国がやらない仕事、つまり「
東西逆転」が起こり低収入・低スキルの仕事しか我々はありつけなくなるのだろう
か。そうしている間に「ドルが半分の価値」になる危機が起こったら?
 


(C) 2006 Policy Research & Analysis Network All Rights Reserved 無断転載を禁じます。