2006年5月23日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.376 Extra Edition
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■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.41
   「ブッシュ政権支持"岩盤"の崩壊」

  □ 村上 博美 :ワシントンDC在住

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■ From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.41
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「ブッシュ政権支持"岩盤"の崩壊」


  ホワイトハウス報道官の刷新、総額700億ドル(約7兆7000億円)の減税法として

配当所得や株式譲渡益に対する減税措置の延長、不法移民問題でのゲストワーカー

政策やメキシコ国境への州兵の派遣、中国人人権活動家と面会し北朝鮮からの「脱

北者」を受け入れ人権問題で中国・北朝鮮を牽制し、拉致家族の横田さんらに会った

のは、ここ一ヶ月の出来事だ。一見何のつながりもないような一連のブッシュ政権の行

動は、実は中間選挙へ向けた支持基盤の修復を目的としたものである。しかし、共和

党の支持"岩盤"である保守派やキリスト教右派の票をつなぎとめるためのあの手この

手が裏目に出ている。ブッシュ政権がなんとか共和党の中道を探ろうとすればするほ

ど逆効果となり、共和党内で対立が深まるという構図になっている。

 最近発表された世論調査でブッシュ政権誕生以来最低の支持率を記録したが、重要

なのは、ブッシュ政権の"岩盤"と言われる支持層まで割れていることだ。これまでイラ

ク戦争で犠牲者がどんなに増えようと、強固な支持を打ち出していた保守派やキリスト

教右派が、ブッシュ離れを起こしている。これまで、大まかに言えば保守派20%、キリ

スト教右派20%の、合計40%でがっちり共和党の過去の選挙を支えてきた。現在、

ブッシュ政権支持率がこの"岩盤"の40%を大きく割り、ある世論調査では29%という

値がでている。11月の中間選挙では、彼らの支えなくして議会の上下院ともに共和党

の多数派議席を維持するのは難しい。

 特にここ一ヶ月で共和党内のブッシュ支持が急落した。最近のギャロップ世論調査で

は、これまで80%台をキープしていた保守派内のブッシュ支持率が、50%台に激減し

たという。特に宗教右派は、同性婚や人口妊娠中絶といった問題へのブッシュ政権や

共和党議会の取り組みが不十分だと不満を表明。中でも大統領が憲法の修正条項と

して同性婚の禁止を盛り込むことに意欲的ではないと、失望をあらわにしている。ある

宗教右派団体のリーダーは、あれだけ反対したのに下院が差別犯罪の法案の中に同

性愛者の保護まで盛り込んだり、ヒトES細胞研究を拡大する法案を可決したと、いま

いましそうに述べた。このままでは中間選挙協力から手をひくことも辞さない構えだ。

 全米各地でデモが起こった不法移民問題では、15日午後8時というゴールデンタイ

ムに、大統領がTV演説で包括的対策を提示した。メキシコとの国境にフェンスを張り

巡らすこと、国境警備のため州兵6000人の派遣、既に国内に1100万人とも言われ

る不法移民へのゲストワーカー・プログラムが主な柱であるが、この妥協策が、かえっ

て共和党内部で分裂を招いている。右寄りの共和党下院とバランスを重視する共和党

上院とが真っ向から対立している。保守派にとってこの妥協策は全く納得がいかないと、

大統領のTV演説を境に失望感が広がっている。つまり、州兵は補助的な役割しか果

たさず実質的な国境警備とはならない上、今回の対策は長くても1年の期間に限られ、

不法に就労している移民にゲストワーカー・プログラムなるもので実質的に滞在許可、

もしくは将来的には市民権を与えるのは納得できないと、憤っている。特に共和党保守

派に根強い排外主義が台頭しており、とにかく不法移民を入れないよう国境警備をもっ

と増強して、国内にいる不法移民を捕まえ出身国へ送り返せという。

 一方、人権問題を憂慮し移民の守護者と自負するカトリック教会は、ヒスパニック系

移民のデモを水面下で動員させ、共和党下院の強硬法案支持に回れば、あるヒスパ
ニック系カトリック団体はグループから離脱すると表明、宗教右派は足並みが揃わず
身動きがとれなかった。ブッシュ政権にとって2004年の米国人口の14%を占めるヒ

スパニック票は無視できず、カトリック票とあわせて2004年のブッシュ政権再選を果

たした重要な要素だった。今、不法移民問題を前に2004年の選挙を戦った同盟関係

が音を立てて崩れている。

 ブッシュ政権は共和党でコンセンサスが取れているはずの減税や新CIA長官の任

命といったイシューに関心を振り向けようとしたが、共和党議会内で歩調が乱れてい

る。ブッシュ政権は、財政赤字の拡大に懸念を示す保守派に配慮してイラク戦争等の

緊急補正予算の上限額920億ドルを設定し、これを超えれば拒否権発動も辞さない

としたが、18日、上院が妥協の産物として1090億ドルが可決されると、共和党下院

議長のデニス・ハスタート氏は、共和党上院を厳しく批判。また、ハスタート氏は、共和

党上院フリスト院内総務が「理想的な人物だ」と形容したCIA長官任命候補については、

「軍人を任命することはどうか」と異議を表明した。つまり、これらの影響力の強い保守

派の人間が、あからさまに共和党内部の批判を展開している。もっと保守派が望む政

策を打ち出さなければ、彼らの信任を得ることは難しくなりそうだ。しかし、実現するか

どうかは未知数。

 共和党上下院の対立の他に、ブッシュ政権と共和党下院との温度差も目立つ。国境
に張り巡らすフェンスの予算審議にしても、国境警備の予算の中に、不法移民の就労
に合法的な雇用と米国市民権取得の道を開くための予算も含まれるとわかると、共和
党下院は強硬に予算案に反対。痺れを切らしたブッシュ大統領は、大統領次席補佐官
のカール・ローブ氏を送り込んで共和党下院の態度を軟化させるよう働きかけた。という

ように、ブッシュ政権と共和党保守派との目線の違いは、修復されている、というよりは

ますます顕著になりつつある。

 ブッシュ政権にとってさらに悪いことに、ABCーワシントンポスト世論調査では、民主

党がほとんどの案件で共和党より信頼できるという結果がでた。現職有利の傾向が

強いはずが、1994年以来最高の55%の有権者が、現職以外に投票する意欲があ

ると答えている。また、議会を共和党支配から民主党へ変えたいという有権者の回答

も目立つ。特に教育、健康保険、ガソリン高騰問題をはじめ、経済、財政赤字、個人プ

ライバシー問題においては、共和党に大差をつけて民主党が対処した方がよいという

結果が出ている。テロ対策においては共和党が健闘したものの、米国民は民主党な

らもっとうまく対処できると思っているようだ。

 めったに公の場にでないカール・ローブ氏を動員して、15日に「ブッシュ政権の経済

政策は成功している」と、減税しても税収が上がったので財政赤字も減っていると市

内で講演させ、保守派へメッセージを送ったが、6ヵ月後の中間選挙までに共和党の

支持"岩盤"が修復されるかどうかは、今のところ不透明である。

参考:Christian Science Monitor, Washington Post他。



 


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