新刊案内:「政策連携の時代――地域、自治体、NPOのパートナーシップ」
2002年12月発売

上山信一著、日本評論社

 

NPOがブームだ。書籍や記事がたくさんでている。だが、多くは各団体の活動紹介や体験記、あるいは抽象理論を超えられない。そんな中で、本書は行政マンがNPOの本質を理解するうえで格好の道しるべとなるはずである。

本書は社会・公共分野の改革にとってなぜNPOが必要か、なぜ有効なのかを豊富な事例を手がかりにわかりやすく解説する。 

事例分析の切り口も斬新だ。NPOの活動以前に、具体的な社会問題に焦点をあてる。すなわち日米両国で実際に起きた環境(湖沼保全、土壌汚染)、地域開発(富士山の保全と開発)、薬品規制、教育などの事例を取り上げる。そしてそこでダイナミックに展開されるNPO、政府、住民(市民)そして企業の連携を立体的に分析する。

観察の原点は、課題に直面した住民(国民)の視点に置く。そこから出発し、なぜ政府だけでは問題が解決できないのか。なぜNPOが政策形成に大きな役割を果たすのかを実証する

●従来のNPO論の限界を打破

 このように、本書はNPOの役割を政府、住民、企業との“関係性“のなかで捉える。これは既存のNPO論をはるかに凌駕する射程の広さだ。おそらくこれは、筆者が営利企業と政府の経営の両方に精通することによるものだろう。筆者は中央官庁勤務の後、マッキンゼーの経営コンサルタントを14年間にわたって務め、近年はわが国に「行政評価」、「行政経営」の概念を普及させた中心人物である。NPOのアドバイザーも務める。

現在は米国在住だが、わが国より数十年長い歴史を誇る米国のNPOの近年の役割転換に注目する。即ち、NPOは、もはやサービスの担い手にとどまらず、政策形成をリードする存在になりつつあるという。公的分野で何か大きな問題が起きると、NPOを中核に官・民の組織の壁や地域の枠を越え、人材、資金、情報がフルに動員され、解決されていくという。官僚機構でも、シンクタンクでもなく、NPOや社会起業家が中心となって現場情報を汲み上げ、政治を動かし政府に政策形成を迫るという。

本書の書名にある「政策連携」(Public Private Partnerships: Strategic Alliances for Social Entrepreneurship)とは、筆者の造語だが、このように民と官の区別なくプロたちが連携して問題を解決するアプローチのことをいうのである。

最近、わが国でもようやく「公(パブリック)の担い手は、政府だけではない」という考え方が普及し始めた。だが、現実のNPO活動は、まだまだ行政サービスの補完・受託が中心だ。「行政とNPOの協働」という言葉もよく見聞するが、精神論の域を越えない。本書は、このような行政機関のあり方に対し、早くも警鐘を鳴らすものといえる。

 

●新たな行政改革論としての意義

 ちなみに本書は、NPOや企業との戦略提携に活路を求めざるを得ない行政機関の経営改革論としても興味深い。筆者は、安易な「民営化論」、そして抽象的な「政策待望論」をきびしく批判する。本書の第3部では、従来の民営化論、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)論、ガバナンス論を次々に俎上に載せ、体系的に解説する。とかく「官も民に倣うべし」という単純な論法に陥りやすい俗説、そして特に官と民の違いに着目する伝統的二元論を戒める。

本書の帯には、「目指せ変革の仕掛け人!」というキャッチフレーズが書かれる。本書は専門書の範疇に入るが、随所にわかりやすいエピソードや読者への語りかけが顔をのぞかせる。こうしたスタイルも新しい時代への予感を感じさせる。

 

(目次抜粋)

序章:「政策連携」とは何か

第1部:事例編:米国の政策連携

第1章:新薬審査の合理化と企業の協力――ユーザー・フィー法――

第2章:土壌汚染地の再開発――行政・住民・企業・NPOの連携

第3章:水域保全と地域環境政府の役割――チェサピーク湾環境保全計画――

第2部:実践編:わが国での展開可能性

第4章:米国事例の成功要件

第5章:練習問題:富士山の開発と保全

第6章:実践に向けて

第3部:政策連携の理論

第7章:政府主導から政策連携へ

第8章:民営化論とニュー・パブリック・マネジメント論を超えて

         


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